■相続財産にはマイナスの財産も含まれる
相続の対象となるのは、「被相続人の財産に属した一切の権利義務」(民法896条1項本文)です。したがって相続人は、被相続人の不動産や金銭のようなプラスの財産のみならず、借金等のマイナスの財産についても承継することになります。
つまり、被相続人が遺した財産が合計でマイナスとなってしまう場合、相続人はこのマイナス分を負担しなければならないのが原則です。
このような場合に、相続人にとりうる手段として、相続放棄や限定承認があります。
■相続放棄・限定承認とは(方法と効果)
相続放棄とは、相続人としての地位を一切放棄することをいいます。相続放棄は相続人が単独で行うことができ、これを行った相続人は最初から相続人ではなかったものとして扱われます(民法939条)。
したがって、相続放棄を行った場合、プラスの財産についても一切取得できない代わりに、マイナスの財産についても一切負担しないという効果が発生します。
限定承認とは、相続によって取得したプラスの財産の金額の限度でマイナスの財産の責任を負うことをいいます(民法922条)。
例えばプラスの財産の合計額が5000万円、未返済の借金の合計額が6000万円だった場合、相続人は5000万円までしか返済義務を負わないということです。
なお、相続人が複数いる場合、限定承認は相続人全員によってのみ行うことができます(民法923条)。
相続放棄・限定承認はいずれも家庭裁判所への申し出によって行います。この申し出には「相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」(民法915条1項)という期限があります。
これを過ぎてしまうと単純承認したものとみなされるので(民法921条2号)、注意が必要です。
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