■相続手続きの大まかな流れ
相続は人の死亡により発生します(民法882条)。その後、①遺言書の調査、②相続人・相続財産の調査、③相続放棄・限定承認、④遺産分割協議、⑤名義変更手続きという流れで手続きを進めていくことになります。
■遺言書・相続人・相続財産の調査
〇遺言書の調査
遺言書には公正証書遺言・秘密証書遺言と自筆証書遺言があります。公正証書遺言・秘密証書遺言は公証役場に保管されているため、公証役場に問い合わせれば有無がわかります。
自筆証書遺言は保管場所に定めがないため、被相続人の自室等を探して調査する必要があります。自筆証書遺言の場合、家庭裁判所に提出して検認を受ける必要があります(民法1004条1項)。
〇相続人の調査
相続人調査は、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・相続人全員の現在の戸籍謄本を入手することにより行います。
遺言のない場合、民法上の定めに従って相続人が決定します(法定相続人)。被相続人の配偶者と子は常に法定相続人となります(民法887条1項)。
そして、被相続人の子が既に死亡しており、その者に子がいた場合には、その子(被相続人の孫)が法定相続人となります(代襲相続、民法887条2項)。被相続人に子や孫がいなければ直系尊属が、直系尊属もいなければ兄弟・姉妹が法定相続人となります。
遺言がある場合には遺言の記載に従って相続人が決定します。ただし、この場合であっても、法定相続人の調査をしておく必要があります。
〇相続財産の調査
相続財産には、原則として被相続人の権利・義務の一切が含まれます(民法896条本文)。例えば、土地・建物・金銭への所有権や借金がこれにあたります。
不動産については、固定資産税課税通知書・納付書や、市町村役場で入手できる名寄帳(所有不動産の一覧票)を利用して調べることができます。
銀行預金は通帳・キャッシュカードのほか、銀行からの郵便物等をもとに調べることができます。
借金については、請求書等の郵便物のほか、信用情報照会により調査することができます。
■相続放棄と限定承認
相続放棄とは、相続人としての一切の地位を放棄することをいいます(民法939条)。限定承認とは、相続によって得た正の財産額の限度でのみ負の財産を負担する意思表示をいいます(民法922条)。
相続放棄・限定承認はいずれも相続開始を知った時から3箇月以内に家庭裁判所に申立てて行わなければならず(民法915条1項本文)、この期間内に手続きをしない場合、単純承認したものとみなされます(民法921条2号)。
なお、相続放棄が複数人いる場合、限定承認は相続人全員で共同して行わなければなりませんが(民法923条)、相続放棄は単独で行うことが可能です。
■遺産分割協議
遺産分割協議とは、相続人全員の合意に向け、遺産の分配方法を話し合うことをいいます。話し合いの手段は特に定められていないため、メール等による協議も可能です。最終的に誰が何を承継するかが決定したら、その協議内容を書面にまとめ、相続人全員で署名・押印します(遺産分割協議書)。
■名義変更手続き
不動産を相続した場合、相続登記を行う必要があります。被相続人の戸籍謄本・住民票除票、相続人全員の戸籍謄本・住民票、不動産評価証明書等の必要書類を準備して、法務局で登記手続きを行いましょう。
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